週刊もちもち動物園

ブラック企業に就職したり訴えたり。ハードな体験談を連載ストーリーにしています

転職先はブラック企業第18話「労基署で会社を訴えてみた」

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ブラック企業にもう限界。労基署に行ってみた

集中力というものは、ギチギチに使いすぎるとプツンと糸が切れるようになくなることがある。張りつめていたものがなくなり、支えを失った操り人形のように膝から崩れ落ちる。そうなったら最後で、どうやっても起き上がることはできない。回復する方法は一つで、気が遠くなるほど眠るしかない。

 

サプリメントのコンサル案件をこなしているときに、それは起こった。パソコンを叩いているときに、いきなり横からガンと殴られたような感覚が襲い、しばらくぼうっとしていた。空を仰ぐように、天井の蛍光灯を見る。いくつもの蛍光灯が平行に、ずらりと並べられて、とても、明るくて、白い。すると蛍光灯がすらりと伸びて前後と連結し、さらに前後と連結して、巨大な蛍光灯になっていく……。

 

気がつくと15分も経っていた。周囲を見回すと、相変わらずいつもの面々が必死にExcelとにらめっこしている。大層なものだ。本当に、みんな、よく働くなあ……。

 

「しょうきち、アポだけど用意できたか」

 

はっとした。そうだ、今は月曜の朝10時。それも月初。コンサルのミーティングに行かないといけない。それなのに、それなのに。

 

「すみません、まだ終わっていなくて……」

 

「おい、お前何やってんだよ。さっきから見ていたけど、全然手が動いてなかったんだけどさ」

 

「すみません……」

 

結局、そのときは上司が全てしゃべり通した。僕は完全に、ダメ人間だった。

 

それからというもの、僕は仕事において恐ろしいほどに集中力を欠いた。なぜか、なぜか仕事ができないのだ。集中ができず、いつの間にか途方もない時間が経っている。

 

あと10分で出来ますと言った資料ができあがらない。それを謝罪しようにも、またか、というような雰囲気が怖くて謝罪できない。そっと提出すると、何でこんなに遅くなるんだと、当然のことで叱責される。

 

改善しよう、と思う。でも、できない。なぜか。

 

僕は周囲のため息にかこまれながら過ごした。プレッシャーをかけてやめさせてしまった、のび太のことが頭をよぎる。あいつもこんな感じだったのだろうか。

 

辞めたい、逃げたい。今まで押し殺していた感情が、ついに押し寄せてきた。もう、だめかもしれない。新卒で入った会社を11ヶ月で辞めて、転職して入った会社も1年経たずに辞めるのか。ああ、人生終わったな。

 

その時、のび太のTwitterを思い出した。

 

「こんな会社、労働基準法違反じゃないか」

 

労働基準法……。そうか、労働基準監督署なら、僕らを助けてくれるかもしれない。監査に入ってもらえば、うちの労働条件も改善されるはずだ。土日に休めるし、日付が変わる前に帰れるようになるかもしれない。

 

僕は週末、勉強会という名の拘束から逃れた後、労基署へと向かった。

 

 

エレベーターを上がって、「労働相談はこちら」のエントランスを入っていく。土日なので、ほとんど人がいない。受付にはおじいさんが一人。声をかける。残業代未払いなのですが、どうすればいいですか。

 

じいさんはちょっと待って下さいねというと、僕をパーテーションで区切られた応接間のようなところに通してくれた。それからパンフレットをいくつか持ってくる

 

「労働時間は週に40時間まで」

 

僕は小さく笑った。ゆうに、週100時間は働いているのだ。

 

僕はもう、これ以上長く働けないということを理解していた。そんな僕の落とし所は「未払いの残業代を全て回収すること」に決めた。そうすれば、僕の年収はおびただしい残業量によって1.5倍~2倍にブチ上がるのだ。垂直跳びだ。昇竜拳だ。

 

僕はその望みを込めて、今までの労働状況を全て話した。毎日会社のソファに寝て、朝9時から朝の5時まで働き、ほとんど帰れないこと。社長による暴力がしばしばあること。土日に休もうとすると、無断欠勤にするぞと脅されること。残業代が一円も出ないこと。

 

ここまで話したら、労基署も納得してくれるだろう。そう確信して、僕はジイサンの顔を見た。

 

しかし、会社と戦うことを決めた僕に、労基署のジイサンはふざけたことを言い始めた。「でも、IT業界ってこういうこと、たくさんありますからねえ。どこも大変なんでしょ?」と。

 

はあ、と僕。私達も調査しようとは思うんですけどねえ、どうも追いつかないんですよねえ、とジイサン。僕は早くも、労基署を頼りにしようとしたことを後悔し始めた。

 

せっかく来たのに何もしてくれないんですか?と言いそうになるのをこらえて、

 

「では、僕は何をすれば、会社の労働環境を是正できるのでしょうか?」

 

と、理性的に言い直した。ジイサンはそうですねえと言って、またパンフレットを持ってきてくれた。見ると、請求書みたいなわら半紙の書式。

 

「これに未払いの請求金額を書いて、提出してください。そうすれば、会社も対応してくれると思います」

 

本当だろうか。ここまでブラックな会社なのに、こんなもので対応してくれるのだろうか。僕は訝しげにわら半紙を見つめた。武器がこんな紙っぺらとは、心もとないものだ。

 

「ありがとうございます。ちなみに、うちの会社には監査が入るのでしょうか。労働条件は改善されるのでしょうか」

 

「それは……そうですね、担当を呼びましょうかね」

 

ジイサンはそういって離席した。それから、労働基準監督官のプレートをつけた30代後半くらいの男性がやってきた。

 

「正直申し上げて、監査が入るかはわかりません。労働基準監督署では、監査に入る会社を毎回会議して決めます。一応議題にあげることはできますが、正直、むずかしいと思いますね。大企業ならまだしも……」

 

「大企業だったら、監査に入ってもらえるんですか」

 

「一概にはいえませんよ。でも、やっぱり小さな会社って、それだけブラックな働き方になりがちですよね」

 

僕は労基署を出た。こんな、わけのわからない仕事を毎日やって、労基法なんて完全に無視しているような会社でも、労基署は動いてくれない。

 

僕は絶望した。暗い気持ちのまま山手線に乗り、オフィスを目指した。残っているタスクをやるために。

 

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