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転職先はブラック企業第72話「新天地」

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前回の話はこちら 

www.mochizoo.xyz

 

スカウトメールをくれたのは、某サービス業の人事次長だった。電話での面談では、僕のことをいたく気に入ってくれ、ぜひ会って話したいと言ってくれた。

 

これは自分にとって結構貴重な体験だった。というのも、転職サイトのスカウトメールというのは基本的に「形式的」なもので、単純な応募の勧誘でしかない。スカウトメールを受信したにも関わらず、「選考の結果、お見送りになりました」等と書類選考で不採用になるケースも多い。

 

だから、今回のようなガチガチのスカウトにあたったことで、僕の気分は高揚した。

 

ブラック企業に使い捨てられて、新卒3年目で2度目の転職活動。そんな僕をいたく気に入ってくれる会社があった。この事実は、傷ついた僕の心をサロンパスのように優しく包み込んだ。有効成分が物凄く染み込んでくるのを感じた。

 

こういう時、やるべきことがある。向こうが会いたいと言ってくれたとき、こちらも物凄く会いたいと言ってやることだ。僕はすかさず電話した。

 

次長、私、九州に行きます。ぜひ早く会って御社のことを知りたいので、お時間をいただけますでしょうか。

 

この電話は効果テキメンで、丁度福岡で合同転職フェアをやるから、そこなら会いやすいだろうと場所を指定してくれた。

 

でも、まだまだ選考が進んでいるわけじゃないから旅費は出ませんよ。それでも大丈夫かな?

 

問題ございません。ぜひ御社の事業所も回っていきたいと思いますので!

 

その時の僕は、例えるならきっと、やる気に満ち溢れた純粋なるモチベーションの塊であり、アホと無垢の濃縮ブレンドであった。

 

いざ、九州

1週間後、僕はジェットスターに乗り、福岡駅のアミュプラザにて次長たちと会った。人生2回目の九州。ブラック企業の夏休みで由布院やら別府やらを回った以来だ。メシがやたらとうまく、温泉があり、過ごしやすい。

 

会場に入ると、次長は採用担当の管理職の女性と一緒に僕を迎えてくれた。

 

ようこそ九州へ!

 

次長は初対面の僕に対して、陽気に言った。少し背が低く、お腹がぽっこりと出ている。その体型と丸メガネと柔和な表情から、まるで「メガネをかけたスーパーマリオ」のようなとっつきやすさを感じた。

 

僕はブースに案内され、次長と女性と一緒に1対2の面談を受けることになった。

 

面談と言いつつ、それは完全に面接の体だった。

 

退職理由などについて、職務経歴書を見ながらつぶさに聞かれた。僕はなかなかに緊張したが、ブラック企業での苦労があったことを詳しく伝えた。もう長時間労働はできない、月に500時間も働くことなんて無理だと正直に伝えた。

 

私はこれ以上、死にそうになりながら働くのは難しいです。ですから、挑戦できる裁量がありながら、社員の負荷を受け止められる企業体力がある御社は、私にとって貴重な職場なのだと考えています。

 

これは僕にとっての賭けだ。

 

職歴を汚した僕ができることなんて、死にものぐるいで働くことくらいだろう。しかし、僕は自分でそのカードを捨ててしまった。長時間労働はできません、過度な残業もゴメンです。そう、明確に宣言してしまった。

 

これを聞いて、おそらく多くの面接官は「こいつ面倒くせえな」と思うだろう。しかし、こうでも言っておかないとホワイト企業にはたどり着けない。これで嫌がられたら、それまでだ。僕は息をのんだ。背中に汗をかきながら、次長の返答を待った。

 

いいじゃないですか。私もね、前の仕事で働きすぎて、体を壊したんですよ。

 

次長は柔和な顔を一層にしわくちゃにしながら、僕に笑いかけてくれた。

 

長時間労働については心配いらない。うちはきちんとタイムカードも使っているし、上場企業だから、無茶をすると労基に怒られてしまう。残業代はきちんと出るから心配しなくてもいいよ。

 

何ということだ。

 

これが噂でいう、ホワイト企業というやつなのか。

 

僕は息をのんだ。捨てる神あれば拾う神あり。

 

ついに神は、僕をブラック企業の地獄から救ってくれるのだ。