もちもち動物園

楽しい働き方研究ブログ。第二新卒転職→ブラック企業勤務→宮崎移住。

転職先はブラック企業第60話「断末魔の叫び」

スポンサー広告

 転職先はブラック企業 前回の話はこちら

www.mochizoo.xyz

 

新卒の前途有望な若者たちは奈落の底に向かって(物理的且つ社会的に)真っ逆さまに落ちていった。この世の終わりに直面したような声、もしくは首を締められたカラスのような声をあげながら。それを上から見下ろしながら、社長は爆笑していた。僕らも合わせて笑顔をつくった。

 

「腹がよじれそうだわ、マジで。クソ笑った」

 

社長はヒーヒー言いながら、タバコの煙をふうっと吐いた。

 

「おい、マゾ彦、お前も飛べよ」

 

突然社長がマゾ彦を指名した。

 

「金払ってやるから。突っ立っていてもつまんねえだろ」

 

自衛隊出身のマゾ彦は、上官命令を拒否する術を知らない。彼は何も抵抗せずに装備をつけられ、「突撃します!」の声とともに華麗に飛び降り、凄まじい速度でミサイルのように落下していった。その潔い姿に気分を良くし、社長はまた笑った。戻ってきた新卒たちも、合わせて笑っていた。

 

帰りのバスでは男性社員全員がストッキングを被る変顔大会や、うまい棒早食い大会などが行われていた。僕らの会社は総会をやるホテルなどでも散々会場を荒らして帰るので基本的に一発で出禁になるのだが、今回も社長がどこからか持ってきたローションを社員にかけ始めるという暴挙に出たことで、そのバスの出禁が命じられた。

 

新宿のビル前でバスを降りると、ローションまみれの僕らを見て、通りのビジネスマンたちは怪訝な顔をした。

 

自由意志

ベンチャー企業の中では、僕らは運命共同体だ。激務の日々を戦い抜きながら、毎日を家族のように顔を突き合わせながら生きる。一緒にいることが前提だから同じものを見て同じように笑うのが望ましい。

 

そこに自由意志はなかった。会社を成長させるという大義名分のもとに、僕らは身体的自由と精神的自由を搾取させられていた。意識した途端に息苦しくなる。入社してから1年近く目を背けてきた事実に、僕は直面した。

 

会社のために成長しようとか、会社のために利益をだそうと言う言葉が途端にうそ寒く感じる。

 

その夜、僕は歌舞伎町のメンズサウナにいた。汗を流して錆を落としてい気分だったのだ。ふと見ると、メールボックスにWeb関連の記事が届いていた。送信者は社長。全社員が一斉に賞賛のメールを送っている。当社の利益向上のためにはウンヌン、これからのWeb業界はカンヌン。僕は嫌になってPCを閉じた。

 

僕はメンズサウナのWi-Fiを借りて、転職会議のサイトを開いてみた。会社の転職情報と、在籍者の口コミがのせられている。世間で「社員を大切にしている」と言われる企業も、ここを除けば反吐の出るような勤務実態が顕になる。もちろん、うらみをもってやめた人が過剰な批判を展開しているところもあるけれども。

 

自分の会社を検索してみた。すると、

 

  • 社員が事業部まるごと夜逃げしたこともありました
  • 頑張って自社サービスを開発しようともしたけど、失敗
  • いろんな事業に次々と手を出して、節操がない
  • 社員が死にそう

 

と、あった。呪いの言葉だ。どれもこれも真実だし、誇張しているところは見られなかった。文章の長さは呪いの強さといえるだろう。今まで苦しみながら辞めていった社員たちの、断末魔を聞いているようだった。