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転職先はブラック企業第27話「受注は反撃の狼煙」

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徹夜明けのアポ

遠くに響くクラクション。太陽はじりじりとアスファルトを焼いている。地面を鳴らす革靴の音は止むことなく続く。東京の夏の昼下がりの、鬱陶しい風景だ。

 

体感温度を限界まで上げるが如く、そこらじゅうでアブラゼミが波状攻撃的に喚いている。なんとも真面目なことだ。死ぬまで鳴き続けるアブラゼミと、死ぬまで働き続けるビジネスマン。果たして、どちらが勤勉なのだろうか。どちらが幸せなのだろうか。

 

僕とインターンの小宮はくまのできた目で、ドリームプランのビルをながめていた。何せ、1ヶ月分の調査を1日半で調べぬいたのだ。無我夢中で調べまくる僕らを見て、ギャルたちは「精神と時の部屋」と揶揄してきたが、そんなことは関係ない。

 

「あー、疲れた……」

 

「本当、全くだ」

 

ボロ雑巾になった僕ら。小宮はほぼ白目。

 

「僕、これが終わったら、二郎のラーメン食べて帰って寝るんです……」

 

「そうか、おめでとう」

 

「しょうきちさん適当過ぎませんか」

 

「そうかもしれない」

 

噛み合わない会話を続けながら、忌々しい階段をのぼってチャイムを鳴らした。マンションのオフィスには、またインターンたちが缶詰になって戦っているはずだ。

 

「はーい!」

 

「お世話になっております、A社のしょうきちと申します」

 

「あ……はい!お待ちしておりました!」

 

聞き覚えのある声。佐藤綾だ。ガールズバーに送られて働く、やめたくてもやめられないインターン。僕は綾に小声で話しかけた。

 

「どうも。昨日は電話ありがとう」

 

「いえ、そんなことはないです」

 

「すぐにどうこうできるかはわからないけど、できることはやってみるよ」

 

「はい……ありがとうございます」

 

部屋の中に通される。その途端、威勢のいい挨拶。ドリームプラン社の抱えるインターン軍隊だ。今日も彼らは成長と夢を得るために、馬車馬のように働くのだ。

 

「ちゃっす。しょうきちさん、ども」

 

柿沼が立ち上がる。顎を前後に動かす動作は彼流の会釈だ。近づいてくると、ブルガリの香水の匂いがした。いけ好かないやつ。軽く挨拶してから資料を渡す。Excelにして、10枚とちょっと。成長戦略の説明のために、パワーポイントも用意してある。小宮の渾身の仕事だ。

 

「はあー、これを1日ちょっとで。しょうきちさんマジ仕事早いっすね!」

 

「いえ。先日はせっかくいいお返事をきけましたから、そのご恩には報いねばと思いまして。我々も、御社の成長のお力になりたいですから」

 

「ぱねえっす、マジ半端ないっす。詳しく聞かせてくださいよ」

 

「はい、喜んで」

 

ゆっくりと資料をめくりながら、説明を始めた。現状、Webサイトの流入数は上がっているが、途中でユーザーが離脱してしまい、注文するまでたどり着いていない。

 

原因はいくつもあるが、代表的なのは2つ。まずは粗悪なコンテンツ。主語述語がごちゃごちゃにしてあったり、説明が不十分だったりしてわかりにくい。意味の分からないサプリなんて買いたい客はいない。次に、エントリーフォーム。やたらとアンケートが多く、データを見ると顧客が離脱しているのがわかった。入力が面倒くさくなり、途中で諦めてしまうのだ。

 

「へー!知らなかったー!確かに離脱してますね!マジすげー!」

 

初めてエロ本でも拾った小学生のような反応。どうやら柿沼はずぶの素人のようだ。これは行ける。

 

毒を仕込む 

「いやー、すごかったっす。正直、この先の成長あんまり見えてなくて。外部に委託するなっていう方針だったから、相談できる取引先もなかったっすよねー。マジ勉強。マジ感謝っす」

 

僕なら断言できる。こんなやつの下で力技でサイトを回すなんて、成長にもならない。効率のいいやり方はいくらでもあるからだ。こいつのために視力と気力と単位を失いながら、インターンに打ち込むなんて、ありえない。

 

さて、クロージングだ。

 

「本来は私だけで対応をさせて頂く予定でしたが、今回は小宮もお手伝いさせていただき、2人3脚で御社の力になりたいと考えております」

 

小宮が会釈する。お見合いでもしているかの表情だ。仕事ではバリバリやるが、こいつもまだ大学生である。

 

「今回の資料の6割は、小宮の制作物です。麻布高校から東大に入っていて、社員以上に働く優秀なインターンです」

 

「すげー。うちも採用してえ!!」

 

大げさに目を見開いてリアクションしてくるチャラ男。やはり、こいつはアホなのだろう。落とすのも容易い。

 

「ちなみに、どうですか。今回の件。ご検討いただけますか」

 

「いや、ぜひお願いしゃっす!うちの理念で、3秒直感全力判断っていう言葉があるんす。今回はマジ俺のバイブスに響いたんで、マジ直感でゴリッと発注させてもらうっす!ういうい!」

 

「ちなみに、決済権は柿沼様がお持ちなんですか?」

 

「そうっす。社長、実は今シンガポールにいて、半年以上帰ってきてないんすよ。だから、今のサプリ事業は俺が全部まるっと回してるっす。あ、ちゃんと昨日電話で許可とりましたんで、そこんとこはOKっすよ」

 

それなら良かった。ありがとうございます。では、こちらをどうぞ。すかさず本契約の書類を差し出し、印鑑をもらう。軽い男は印鑑を持ち出すのも軽い。

 

「じゃ、よろしくっす!マジ頼みますから!」

 

「こちらこそ。一緒に頑張っていきましょう」

 

握手をしながら、毒を仕込むように柿沼を見つめた。見ていろ、これからお前を丸焼きにしてやる。

 

投稿強化中:この会社、もうだめだとおもったら

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