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もちもち動物園

楽しい働き方研究ブログ。第二新卒転職→ブラック企業勤務→宮崎移住。

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転職先はブラック企業第21話「ミーティング」

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社長からの激詰めから逃れるようにミーティング室に入る。

 

「しょうきち、散々だったな。気にすんな」

 

関西出身のさんまがフォローしてくれる。歯磨きしながら街をあるいたりして僕を驚かせたりするが、こういう優しさが彼の持ち味だ。

 

「お前、今日の訪問で、商材の話したんか?」

 

「ああ、したよ。ブログを使った集客コンサルティング。訪問先からは、ブログなんて女子高生のおもちゃだろって言われて聞いてもらえなかった」

 

「それはあかんな。先方は相当リテラシーないんやな」

 

「全くだよ。最近はYouTuberだってプロモーションとして使えるのにさ」

 

僕らのようなBtoBのIT企業が躓く要素の一つに取引先のリテラシー不足がある。特に、相手が年配だったりするとややこしい。ITの話を極めて具体的に、例え話を使いながら話しても聞く耳を持たないことだってある。

 

今日の訪問先も、地引網だとかいろんな例えを使ったにも関わらず、理解してもらえなかった。先入観という壁は厚い。その壁の厚さはたいてい、相手のリテラシーの理解度とこちらのサービスの信頼性の差分だけ厚くなる。

 

ドアがいきなり開いたかと思うと、詰められた営業社員と一緒に社長が入ってきた。一気にミーティングスペースがいっぱいになる。部屋の空気が一気に変わった。酸素濃度が急速に低下したかのように息苦しくなる。

 

「おい、始めるぞ」

 

軍隊の整列みたいに一斉にPCを開く。ここで出遅れたら銃殺ものだ。

 

「で、今日は営業以外の人間にも訪問に行ってもらったわけだけど」

 

社長が社員全員を見渡す。

 

「どうだった?マゾ彦」

 

「え~、何も理解してもらえませんでした~」

 

「馬鹿かお前は。バカは顔だけにしやがれ。ほい、次」

 

次はやり手の営業社員、ウォーリー。イケメン高身長で慶應出身の高学歴だが、なぜかこの会社を創業当時から手伝っている。普通に就職していれば大手企業にも引く手数多だっただろうに、彼はそれでもこの会社で頑張っている。

 

「先方は既にWebコンサルを使っているようでした。話では、そのコンサルサービスの中にSEO強化のプランも入っていて、うちのサービスと重なる部分があると。そのSEOプランもなかなか大きな規模で、うちのリソースでは賄えそうにありませんでした」

 

「それで、リソースがないからどうしたんだよ」

 

「それで……終わりました」

 

「てめえ何年営業やってんだよ。リソースなんて外部パートナー使えばいくらでも生み出せるだろ。何ならてめえの大学行ってインターン2,3人かっさらってこい。無給で働かせればどうってことないだろカス」

 

「すみません……」

 

「上場ってどういう意味かわかってんの?うちの会社が世間一般の投資家に、公平に、他の会社と同じように評価されるってことだ。つまり、腐ってる会社はカスみたいに扱われて評価が下がる。いい会社は投資を受けて頼まなくてもブリブリ豚みたいに太らせてもらえる。てめえはこの会社をカスみたいにしてえのか、あ?」

 

「成長させたいです……」

 

「あ?」

 

「成長させたいですっ!!」

 

「なら受注してこいよ。いっぺん死んでこい。ほい次」

 

ひとりひとり、ボロカスに切られていく僕たち。尋問が終わったときには、ミーティング室はエントロピー増大の法則が支配していた。すすり泣きと絶望が混ざり合って増殖し続ける、歪んだエントロピーの増大。僕はもちろん、開口一番叩き切られた。

 

「最近運用を開始したサービスだからまだ営業に慣れてないかもしれないけどな、舐めるなよ。お前らが営業している意味を考えろ。そこから徹底しろ」

 

「まあ、そのくらいにしようよ」

 

副社長の青井が入ってきた。物腰は柔らかいが、彼にはロジックしか通らない。ミスがあると、表情を変えずに問い詰める上、感情的な言い訳は一切聞かない。「青い血が流れている」という噂さえある。切れると笑いながら死ぬまで殴ってきそうなイメージだ。

 

「新しい商品なんだからさ、いきなり押し付けてもしょうがないよ。そもそも、今回のミーティングの趣旨は、売り方をわかってもらうためのものなんでしょ」

 

「まあ、そうなんだけどさ」

 

社長も青井の頭の良さは認めているから、こういうときに引いてくれる。そういう意味で、今回の青井は救世主だ。さあ、傷ついた僕らの涙をぶどう酒にでも変えてくれ。

 

「みんな、社長が言いたいのはね、今回の商材を、ただブログマーケティングの商材として使っても意味が無いってことなんだよね。もっと上段から行こう」

 

青井がパワーポイントをプロジェクターに映し出した。

 

「僕らのやろうとしているのはCMSサービスという市場になる。CMSとは何か知っているね?」

 

「コンテンツ・マネジメント・システムです」

 

「そうだ、さすがしょうきち。まあ、サイト制作担当だもんな。この場合、コンテンツとは、多くの場合テキストで書かれたページを指す。マネジメントというのは管理のことだね。CMSというのは、テキストで書かれたページを沢山増やしたり、改良したり管理できるサービスのことを言うんだ」

 

「ブログを書きためたりするものですね」

 

「ブログとは、CMSの一つの使い方だね。CMSはあくまでもページを管理するシステムのことだから、ホームページの一部に組み込んだりしてもOK。ほら、企業ホームページの中で、最新情報みたいなページあるだろ。あそこは更新頻度がすごく高いから、あそこにCMSをぶっ込んだりしてることもある」

 

「使い方がいろいろあるんですね」

 

「そういうこと。ちなみにCMSの代表格は何かわかるかな」

 

「WordPlay」

 

「マゾ彦、ありがとう。でも正解はWordPressだね。WordPlayってどんなプレイなんだ?」

 

マゾ彦が顔を赤くする。やはり、こいつはアホだ。

 

「WordPressは無料で使えるサービスだ。自社でオリジナルCMSを組む会社もあるけれど、こいつを使って安くサービスを仕上げる会社もある。見てくれはあたかも自社サービスのように謳ったりもするね」

 

「なので、CMSサービスのキャッシュポイントは3点あるね。まずはCMS自体の料金。そして、記事執筆代行料金。そして、最後は僕らがやろうとしている、コンサルティング料金。コンサルティング料金はどのような価値の対価としてもらえるんだい?」

 

「顧客のマーケティング課題に則した運用方向性の設定の対価。CMSで記事を執筆し、それぞれの記事で集客しようとしても、どの記事で顧客を集め、どの記事で信頼させ、どの記事で購入させるといった戦略がなければ課題解決には向かない。したがって、その方向性を定めることで、CMSの有用性をはじめて発揮できる」

 

ウォーリーが辞書でも引くような口調で答える。

 

「正解だね、さすが。今のはメモしておくといいよ。さて、今の話がすべてだ。僕らは幸運にも恵まれた頭脳を持っている。おそらく、ここにいるメンバーの大学入学時の偏差値は外資系戦略コンサルティングにも引けをとらないだろう。僕らはその頭脳を持って、ただのブログを高値で売りつけているしょぼいマーケティング企業を駆逐するんだ。戦略もなしにブログなんてやって、なんで儲かるんですか?ってね」

 

青井がニヤニヤしながら言う。獲物を狙う蛇のような目だ。青井には、ポジショニングマップで競合を塗りつぶすのが一番のエクスタシーになり得るのかもしれない。

 

 

「そういうこと」

 

社長が口をはさむ。

 

「だからお前ら、今度はブログシステムを売ろうと思うな。ブログなんてただでもできるんだからな。それを月額50万とろうってんだから、それだけの価値を見せつけろ」

 

「そうだね。ただ、いきなり50万円払っていただくのも難しいと思うんだ。だから、御存知の通り、1ヶ月の無料調査期間をキャンペーンでやってる。調査と言っても、ほぼ営業なんだけどね。クロージングする前に、たくさん情報がほしいから、最初の1ヶ月で顧客からデータをもらって営業資料を作るんだ」

 

「なるほど~、そういうことだったんですね~」

 

マゾ彦が口を開けっ放しで賞賛する。

 

「そんなことも知らなかったのかよ、てめえは死ね!」

 

社長が投げつけたジャンプはマゾ彦の隣に座っていたウォーリーに当たり、ウォーリーは静かに頭を擦った。さぞかし痛かったのだろう。

 

ミーティングは終了。時間は朝の3時だ。さて、これから訪問資料でも作ろうかな。

 

投稿強化中:ミーティングがカオスなのに気づいたら

nojisho.hatenablog.com

 

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